本来、住宅の購入予算とは「捻出できる頭金+住宅ローン借入額」で算出されます。
ところが、これにプラスαできる、ありがたい存在があります。それが親からの資金援助。
ただ、資金を受け取った際は贈与税について考慮しておかないと、後で高額の税負担をすることにもなりかねません。
ここでは、そんな贈与税について詳しく解説していきます。
そもそも、贈与税とはどんな税金なのでしょうか?
贈与税は、個人が個人から財産をもらった時に、受け取った側にかかる税金です。親かどうかは関係なく、「個人から財産を受け取れば」そこには贈与税が課税されるということを理解しておきましょう。
では、贈与税がかからないのはどんな時かというと、例えば「法人から」財産を受け取った時や、夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から「生活費や教育費」として受け取った場合です(ちなみに法人の場合には所得税や法人税が課税されます)。
抜け穴を探すように、「生活費や教育費の名目で受け取って、後にそのお金で家を買えばいいだろう」と考える人もいますが、国税庁のホームページには、そのような名目で受け取っても「預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかる(原文ママ)」と書かれています。
また、ここでいう「財産」とは、なにも現金に限ったものではありません。預金や土地、建物や株式、権利に至るまで、お金で見積もることができるものは、すべて財産とみなされます。
「土地の提供を受けるだけだから、贈与税は関係ない」というような言い分は通用しませんので、注意しましょう。
今回、冒頭で「親からの資金援助」の際は、贈与税に気を付けようという話をしましたが、これはなにも親に限ったことではありません。例えば、祖父母からの資金援助にも課税されますし、つきつめれば「夫・妻」からの資金を受け取ったとしても課税されるのです。一方、親からの資金を受け取っても贈与税がかからないタイミングがあります。それは、「相続」。この時は、贈与税ではなく相続税がかかります。
もともと、贈与税は相続税を補完する性格を持っています。
相続税は、亡くなった人の財産を相続人が受け取るときに発生する税金です。この時、贈与税という制度が無ければ、ほとんどの人が生前に財産を譲り渡してしまうことでしょう。それでは相続税が形骸化してしまうということで、贈与税の考え方が生まれたのです。
というわけで、基本的に家族間同士で財産が移動する際には、税金がかかるということをまず理解しておいてください。
20歳以上の人が直系尊属(祖父母、父母など)から財産を受け取った際の贈与税の計算方法は、以下の通りです。
(年間で受けた贈与額 - 110万円※) × 税率 - 表の控除額 = 税額
※110万円は基礎控除額
基礎控除後の贈与額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超400万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円超600万円以下 | 20% | 30万円 |
600万円超1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,000万円超1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
1,500万円超3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
3,000万円超4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
例えば、1年間で1,000万円の贈与を受けた場合、
(1,000万円 - 110万円) × 0.30 - 90万円 = 177万円
ということになります。
「税金だけでそんなに払わなければいけないの!?」と思った人もいるでしょう。安心してください。直系尊属からの住宅購入のための贈与は、特例として非課税枠が設けられており、その条件に当てはまっている場合は課税されません。
その条件とは、大まかに書くと以下のようなものです。
・贈る側・受け取る側が20歳を超えていて、日本に住んでいること
・贈る側・受け取る側の年間合計所得が2,000万円以下であること
・贈る側が直系尊属であること
・住宅購入のための贈与であること
この条件を満たせば、非課税枠が生まれます。その額は住宅が省エネ基準を達成しているかどうかや、消費税の税率、契約締結年月によっても変わってきますので、それぞれ確認するようにしてください。
非課税枠を超えるような贈与の場合、今度は税金を抑える方法を考えることになります。
ここでは、計算の都合上、非課税枠のことは省いて考えていきます。先ほどの計算例でいくと、1,000万円の贈与に対して177万円が課税されることになっていました。
ただし、毎年110万円までは基礎控除がありますので、課税はされません。これを利用して、毎年100万円の贈与を10年に分けて行うことで、贈与税はかかりません。
住宅ローンに当てはめると、頭金は増やせませんが、その代わり繰り上げ返済によって早期完済を目指すこともでき、そのうえで税金分を抑えられるのでお得です。
贈与税に関しては、年度によって非課税枠にもブレがあり、今後変更される可能性も否定できないため、その時々の最新情報を確認するようにしましょう。